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2022年度よりスタートする、新「高等学校学習指導要領」。その中でも、国語の『言語文化』に注目し、ドルトン東京学園中等部・高等部の沖奈保子先生に情報や指導のポイントなどをまとめていただきました。全6回の連載でお届けする予定です。
第2回の今回は、『宇治拾遺物語』を題材に、作品の存在意義にまで迫る探究活動を、具体的にご紹介いただいています。ぜひ参考になさってください。
『言語文化』のバトンをつなぐ
連載企画 第2回
説話の世界を楽しもう
1. 過去を生きたさまざまな人と出会う ―― 我が国の「言語文化」に対する理解を深める授業とは?
「いつも同じような作品を読んでて、つまらない。先生、『竹取物語』なんて、小学校の時にかぐや姫についてのお話を読んで、中学1年生の時に、冒頭を暗唱して、5人の求婚者と帝の話を読んで、それで高校に入学したら、また『竹取物語』!今度は、冒頭と最後の昇天の箇所を品詞分解、現代語訳して……正直、飽き飽きしました。」
これはある生徒の言葉です。
『竹取物語』は、言わずとしれた我が国を代表する古典文学作品で、現存する最古の作り物語です。作品成立の背景など謎も多く探究の素材としても優れているのですが、なるほど、小学校、中学校、高等学校と毎回出会うとなると、教材として発達段階に合わせた学習活動を行っているものの、嫌気がさすかもしれません。古文の時間が限られているのだから、せっかくならもっと違う作品に出会いたいという気持ちなのでしょう。一つの作品を多角的に……というよりも、さまざまな登場人物との出会いから学ぶのもよいかもしれません。
2. さまざまな人物に出会う ―― 事例案「さまざまな人に出会う」―『宇治拾遺物語』を読む
前回、『宇治拾遺物語』「児のそら寝」について紹介しました。多くの教科書でも冒頭で扱われる入門教材です。短い文章ながら、児と僧の軽妙なやりとりが描かれる魅力的な作品です。このような登場人物のやりとりが見られる作品を、複数扱ってみるのはどうでしょうか。
(1)登場人物の行動や心情をとらえよう
『宇治拾遺物語』を素材に考えてみましょう。鎌倉時代初期に成立したとされる『宇治拾遺物語』には、約200編の説話が採録されています。その中から、読みやすい素材をあらかじめ10~20編程度ピックアップして、活動の素材にします。
実施時期 4月~5月
授業時数 2~3時間
単元目標
・古典の世界に親しむために、作品や文章の歴史的・文化的背景などを理解すること。
(学習指導要領:第2 言語文化 2内容〔知識及び技能〕(2)イ)
・文章の種類を踏まえて、内容や構成、展開などについて叙述を基に的確に捉えること。
(学習指導要領:第2 言語文化 2内容〔思考力、判断力、表現力等〕 B「読むこと」(1)ア)
学習課題
『宇治拾遺物語』の中から1編を選び、登場人物とあらすじ、登場人物の人間関係等について、聞き手にわかるように説明し、説話について考えを深めよう。
学習活動
1. 『宇治拾遺物語』から1編を選ぶ。
2. 選んだ話の内容を、適宜現代語訳を参考にしながら読み取る。
3. あらすじ、登場人物、作中の印象に残った登場人物の行動やセリフを、原文を引用しながらスライド(またはプリント)にまとめる。
4. まとめた内容を発表する。
5. 発表後、内容や登場人物の行動の共通点やテーマについて話し合う。
6. なぜこれらの作品が説話として残されたと思うか、意見をまとめる。
〈スライド例〉
「絵仏師良秀」
(2)バリエーションを楽しむ
事例では『宇治拾遺物語』を取り上げましたが、他の作品を用いてもよいでしょう。『古今著聞集』や『今昔物語集』、『十訓抄』など平安時代後期から鎌倉時代にかけてのさまざまな説話の中から、生徒たちにあわせて作品の数や、長さ、現代語訳や解説を調整しながら提示し、豊かな作品世界を味わうきっかけをつくりたいものです。
じっくり作品に向き合いたいけれど、新学期は忙しくで時間がない! という場合もあるかもしれません。そんな時は、古典作品のダイジェスト版などを利用するのもいいかもしれませんね。角川文庫や小学館の古典関連書籍は、教材研究にも役に立ちます。
私たちも生徒たちとともに、豊かな説話の世界に浸ろうではありませんか。語り継がれた物語の中に、「そのようにしてまで生きようとする『人間』とは何か」という問いが垣間見えてくるかもしれません。
【参考図書】
※『宇治拾遺物語 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典』 KADOKAWA(角川ソフィア文庫)
※『日本の古典をよむ(15) 宇治拾遺物語・十訓抄』小学館
参考:「進研WINSTEP Core 国語1 古典編 [新課程版]」 UNIT3『世界を広げる「信仰心」』
2021年12月27日 公開
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