研究会レポート(数学)『共通テスト直前期指導を考える会 ~3年生2学期からの取り組み~』

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2023年7月15日 開催 研究会レポート(数学)
『共通テスト直前期指導を考える会 ~3年生2学期からの取り組み~(数学)』

2023年7月15日(土)、東京都立国立高等学校・平井恒先生、岡山県立岡山朝日高等学校・坂野賢太郎先生をお招きし、オンラインにて『共通テスト直前期指導を考える会 ~3年生2学期からの取り組み~(数学)』を開催いたしました。ご講演の内容をレポートいたします。

研究会の詳細

講師紹介

平井 恒先生(東京都立国立高等学校)
東京都立国立高等学校主任教諭。
数学指導担当。教職歴17年、同校に赴任して4年目。同校情報管理部主任。東京都高等学校数学教育研究会(都数研)に所属し、図形教材の開発、1人1台端末を用いた授業実践を中心に幅広く研究を続けている。

坂野 賢太郎先生(岡山県立岡山朝日高等学校)
岡山県立岡山朝日高等学校教諭。
9年間の私立高校勤務を経て、母校である同校で3年目。現在、補習科の担任。今年度の授業は、補習科と高校3年生を担当している。週末にはオンラインでの数学研修会などに参加し、自分の指導力を伸ばし生徒に還元できるように、数学力と授業力の向上を目指して日々取り組んでいる。

研究会

研究会 『共通テスト直前期指導を考える会 ~3年生2学期からの取り組み~(数学)』
日時 2023年7月15日(土)
対象 全国の高等学校・中高一貫校(中等教育学校)の先生
開催形式 ZoomでのLIVE配信

研究会レポート

講演の主な内容

・共通テスト指導事例:東京都立国立高等学校 平井恒先生
・共通テスト指導事例:岡山県立岡山朝日高等学校 坂野賢太郎先生
・平井先生×坂野先生ご対談・質疑応答
・さいごに

共通テスト指導事例:東京都立国立高等学校 平井恒先生

最初は基礎力の徹底が最重要課題

共通テストは文章から自分で立式して問題解決する問題や、問題を応用させて一般化させる問題が増えていると思います。文章を読み込む難しさがあり、出題の仕方に関しても問題を「解く」が主体ではなく、「活用する」問題が圧倒的に増加しました。

本校では最初に最重要課題として「基礎力の徹底」をしています。典型的な問題をほぼ思考することなく手が動いて解けるレベルまでの徹底です。あとは「基礎力をアウトプットする実践力の養成」です。限られた時間の中で正確に計算できる計算力も大切にしています。計算スピードは1~2年生からの積み重ねで徐々に養っていきます。

スケジュールとしては、3年生1学期~夏休みの期間はインプット(基礎力の徹底)をします。夏休み~2学期前半に関してはインプットとアウトプット両方で、実践的な分野別演習をします。直前期のアウトプットは『直前演習』(ベネッセコーポレーション)で共通テストの形式に合わせた通し練習をします。演劇などと一緒で、最初は役ごと、それから場面ごと、そして最後には全体の通し練習を行って完成するイメージです。

共通テストに向けて生徒に付けたい力と1~2年での下積み

生徒には、教科書レベルの理解から繋がり、自ら思考しようとする態度、発見しようとする探究心、数学を様々な場面で活用しようとする力をつけてあげたいと考えています。だからこそ直前期だけでなく、直前期に繋がるまでの取り組みが非常に大切なのだと思います。

そこで重要なのは指導計画です。本校では1年の授業から対話形式の考えさせる授業を全教員が実施しています。定期考査にも、最低1問は思考問題を取り入れています。

直前期はあくまで「共通テスト慣れ」の時期です。共通テストにとらわれすぎないで、まず数学の基礎力の徹底をすること。そして徐々に慣れ、最後に実践的な通し練習ができたら、共通テストの指導がうまく通るのではないかと考えて指導しています。

共通テスト指導事例:岡山県立岡山朝日高等学校 坂野賢太郎先生

昨年度3年生の数学の取り組み

本校の授業の多くは二次試験対策(記述形式)の問題演習です。ただ全体で12月中旬以降に「マークマラソン」を実施します。これは2日間で全教科合わせて1回分のマーク模試を行い、その翌日に復習日、合計3日間の周期で模試をやり続けます。共通テスト本番まで6~7セットほど行われます。

授業内で共通テストを扱う文系の選択数学では、『重要問題演習』(ベネッセコーポレーション)を4月に配布。授業内で解き、残った時間で解説、あとは各自で復習します。他はマーク対策の教材2種類を9月初旬に配布。うち1種類は『直前演習』(ベネッセコーポレーション)です。教材配布の際には、授業で行う回数や内容を明記したものも配布します。

理系の難関・最難関や難関医学部を志望する生徒は学校の授業でマークは取り扱いません。ただし9月のマーク模試で点数が低い生徒には声をかけ、志望に関わらず補習ではマークを選ぶように働きかけをしています。

マークと記述のバランスについて

私は「マーク対策の教材でしかできないこと」「記述対策の教材でしかできないこと」「どちらの教材でもできること」の3種類があると考えています。マーク対策では、全体での時間配分の確認、問題文を素早く正確に読み解く力やうまく誘導に乗る力の育成等ができます。記述対策では、1つの問題に様々な角度からアプローチする力、採点者に伝わる答案を書く力がつきます。一般的に成り立つ事象の考察、計算テクニック・正確さ等はどちらの教材でも身につきます。

記述よりマークが苦手、マークはできるが記述ができない、など様々な生徒がいますが、どちらも苦手を対策することで欠けている思考の流れが身につきます。記述の練習をすることがマークにも活かせ、マークの練習をすることが記述にも活かせると考えて指導しています。

大切なことは我々指導者が生徒の様子を見て、必要な教材を用いながら「記述でしかできないこと」「マークでしかできないこと」「どちらでもできること」のどの力を鍛えたいか、経験させたいかを意識して取り組むことだと考えています。

平井先生×坂野先生ご対談・質疑応答

平井先生
坂野先生のお話をお聞きして、マークと記述のバランスでどちらにも活かせるという話に納得し、私も自信が持てました。マークマラソンの話では、学校一丸となって取り組む姿勢が非常に参考になりました。
進行役
演習授業の話で、授業で生徒が受け身にならないよう取り組まれている仕掛けがあればお伺いしたいです。
平井先生
1~2年生は1人1台iPadを持っていて、生徒の実際の取り組みの様子が私の方でも見られます。そこで「あまり意見を言わないけど、いい考え方の生徒」の意見を取り上げるようにしています。3年生でも、ただ解いて解き方を解説するだけの授業はできるだけやらないようにしていて、周りと情報を共有して深めてみる時間を各授業1回はできるようにしています。
坂野先生
本校では記述の授業で大体3~4問をやりますが、生徒が自分の解答を板書して、その後の解説まで本人に簡単にさせています。こちらからは押さえてほしい点をふって、まず自分で考えてもらい、その後、周りと共有。その題材から少し広げたところで議論をさせます。毎回とは限りませんが、主体的に何かをやれる時間を少しでも取れるような授業展開を考えています。
進行役
量をこなすよりも、生徒の主体的な考えを引き出す取り組みもされているのが伝わってきました。1~2年次に比べ、演習期で手厚くしているポイントや考えがあれば教えてください。
平井先生
様々な意見を共有させるのは練習期から大切だと考えているのですが、知識がたくさんある演習期だからこそ情報を共有させるのがすごくいい時期だと思っています。
坂野先生
私もその通りだと思います。習ったタイミングでは知識は絞られてしまいますが、全部一通り習った段階で色々なものを結びつけて考えていくことが、共通テストを解く際にも思考が繋がるポイントになるのではないでしょうか。

さいごに

平井先生
私も共通テスト指導にかなり難しさを感じています。共通テストにはまだ読めないところもたくさんあって手探りのまま勉強しています。ですので、全国的に先生方の様々な取り組みを情報共有しながら、お互いに頑張っていけたらいいなと思っています。本日はありがとうございました。
坂野先生
私自身も名城大学の竹内先生の勉強会など、色々な場所で勉強してきて、生徒に問いかける授業展開を意識するようになりました。先生方がそれぞれの学校で取り組まれている事例もお聞きし、さらによりよい授業を目指して頑張りたいなと思っています。本日はありがとうございました。

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2023年07月15日 開催
2023年09月12日 公開