指導事例【低学年】低学年指導 座談会 第一回

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【低学年】低学年指導 座談会 第一回

指導事例 vol.018

さまざまな学校課題や指導テーマに対して指導を工夫されている先生方に取材を行い、その実践をご紹介する連載企画「指導事例」。

一年を通じた低学年指導についての状況やご指導事例をお伺いするため、昨年度高校3年生をご指導された現1年生ご担当の先生方3名による年間3回(予定)の座談会を企画しました。第1回目の今回は、昨年度の共通テストの振り返りや、それを踏まえての1年生前半期のご指導についてを中心にお話をうかがいました。これからの共通テスト・進路実現に向けた高校低学年指導のご参考になれば幸いです。

【低学年】低学年指導 座談会 第一回

平野 優先生
岡山県立岡山操山高等学校 教諭。国語(漢文)指導担当。
教職歴15年、同校に赴任して10年目。現在は1学年の漢文をご担当。ICT活用を軸に生徒の主体的な学びと教師の持続可能な働き方をいかに両立するかを模索されている。地域の教育者同士で作る研究サークルにも所属し、学校現場でのICT活用に関わるセミナーの企画・運営に力を注がれている。

渡邊 翼先生
神奈川県立鎌倉高等学校 教諭。数学指導担当。
教職歴11年、同校に赴任して3年目。現在は1学年の数学Ⅰ・Aをご担当。 進路指導を通して生活指導や生徒指導ができると考えており、生徒には「部活動・行事」≒「勉強」とし、 “自己開発” に努めるよう促されている。その中で、生徒自身が自ら課題を見つけ、自ら解決できる力を育成されている。また、県内教諭との勉強会を定期的に行い自己研鑽に励まれている。

佐藤 俊作先生
大分県立大分舞鶴高等学校 教諭。英語指導担当。
教職歴23年、同校に赴任して4年目。現在は高校1年生をご担当。前任校では学年主任や進路指導主任を担われた。システマティックで効率的な、チームで共有できる英語指導法の確立に尽力されている。石黒文雅先生をはじめ、県内外の指導者による研修会に頻繁に参加し、常に自分の指導法に改善を加えられている。

01. 共通テストを振り返って

低学年からの基礎・基本の習得の重要性を感じた

進行役
お三方とも昨年度は高校3年生のご担当でしたが、2021年の共通テストについてのご感想や、それを踏まえた授業の方向性についてお聞かせください。
渡邊先生(数学)
内容に関しては、比較的、例年のセンターに近い要素があったと思います。ただ、共通テスト導入初年度だったのでこれからも同じだとは言い切れず、個人的には2022年以降、変化していくのではないかと考えています。
平野先生(国語)
現行の指導要領も加味すると、試行調査のような振りきった問題は出せないと思っていましたが、実際にそうなって安心しました。ただ、予想される範囲内での「複数素材」や「学習場面に関連付ける」出題はされていました。

今後の指導では、基礎・基本の習得の重要性と、その定着を低学年のうちに早く終わらせることがポイントだと感じました。

佐藤先生(英語)
英語ではよく言われている語数の増加によるタイムプレッシャーがかかっていました。これは、解くスピードのない生徒には厳しかったと思います。また、従来のセンターと比べると、アカデミックな内容が少なく実用的な内容が多いので個別大学入試(2次試験)との指導をリンクさせることが難しくなっていると感じました。

基礎・基本の定着の上で「筋道を立てて考える」

進行役
センター試験から共通テストになったことで、指導上で必要になるような違いはあったでしょうか?また、今、振り返ってみるとできていたことなどもあれば教えてください。
渡邊先生(数学)
日ごろから指導上気にしているのは、「より深く考える」ということです。センター試験では公式やパターンを適用して答えを出すことがゴールでしたが、共通テストに向けては、筋道を立てて考える力が生徒に備わっているのかを重点的に見ていこうと思っています。そのためには、まず「考える土台作り」が重要だと考えています。

一方で、先ほど平野先生がおっしゃった「基礎・基本をできるだけ早く定着させること」は不可欠です。知識があるからこそ考えを広げられるので、難しいですが「基礎・基本を早く定着させること」と「深く考えること」のバランスをうまくとっていきたいですね。

平野先生(国語)
共通テストになって、傍線前後をテクニカルに処理すれば解ける、という問題が減った印象です。全体を通して、とか、素材同士の関りを問われるような問題が増えています。平均点は例年並みでしたが、「頭の使い方」としてレベルの高い出題という印象で、ここは練習していないと絶対にできないと思います。

02. 1年前半期の重要性

自分で考える学習習慣の確立を ~「わかる」と「できる」は違う~

進行役
高校入学時・1年前半期の指導について、大切にされていることや変えていきたいことはありますか。
平野先生(国語)
根本的な課題として、生徒の言葉が非常に乏しいので、言語感覚を磨くことが大事だと思います。例えば、私は「やばい」しか言わない生徒に、「やばい」の中身を切り分けて言語化することを伝えています。このようすることで言語感覚を磨くことができます。

そして、「言葉を知らずに成績は伴わない」、「覚えなきゃ何もできない」ことを生徒に自覚させることが大事です。そのことは、小テストや校内実力テストの結果にも顕著に表れます。どんな学習スタイルであっても、覚えなくてはできないことは、一年生のうちに知識として入れておくことが重要だと思っています。

佐藤先生(英語)
低学年指導については、学習習慣をつけることが大事だと考えています。英語は英単語が登竜門と言えますので、単語学習をいかにしつこくやるか。一年生では単語と音読に焦点を絞り、クセ付けすることが重要だと思っています。
渡邊先生(数学)
数学は公式を入れて解くだけで、深く考えないパターン学習からの脱却をしています。「わかる」と「できる」は違います。自分で考える学習習慣を日常的にさせていくことが大事だと思っています。入学者説明会や新入生オリエンテーションなどの導入期指導で、高校学習ガイダンスを繰り返し実施しています。

03. 校内実力テスト、校外模試の位置づけ

模試は、教師:指標と途中経過観察、生徒:自身の課題の確認

進行役
模試の位置づけについては、共通テストになってどのように変わりましたか?
平野先生(国語)
模試は、全国の受験生が同じ条件下で受験するので、その結果は現状を知る指標になります。本校の場合は、個別大入試に向けた指導がメインで、1年生で3回、2年生で3回、3年生で4回行う校内実力テストと、進学実績の相関を進路指導に使っています。その分、教員は実力テストの作問に非常に力を入れています。
佐藤先生(英語)
生徒の学習の経過を把握するものとして使用しています。また、志望校を入力することで、生徒にとっても進路の意識がつく転機になっていると思います。
渡邊先生(数学)
私は、模試は現時点での学力の到達度を測るためのものだと思っています。模試対策はしていません。それよりも模試問題を解きなおし、自己分析し、自分の弱点や課題を確認させることが大事だと思っています。

本校では、最初から私立専願に決めているような生徒も多いので、国公立大も視野に入れることも含めて生徒に提案していきたいと思っています。

言語化の重要性 ~物事を自分の言葉で表現し、落とし込むことができるように~

進行役
昨年度、初めての共通テストやコロナ禍などあった中で、今年度は普段の授業で意識して変えたことはありますか?
渡邊先生(数学)
やはり普段の授業では、学校の授業でしかできないことを意識して取り入れています。特にコロナによる休校で人と話すことに飢えていた生徒が多く、「誰かと協力して知識を高めること」を意識して指導しています。

また、私も平野先生がおっしゃった通り「用語を知っていること」が大事で、そして「国語力がある子は伸びる」と思っているので、物事を自分の言葉で表現できるような指導を心掛けています。
反面、授業の進度を優先すると知識の定着が疎かになりがちなので、一人で取り組める演習は課題としています。「一人でやれること」と「学校でしかできないこと」は切り分けながら指導しています。

平野先生(国語)
漢文は1年生の時にみっちり学習すれば、2年生以降はマイペースで進められるので、1年で意識的に取り組ませています。また、漢文を学ぶ意味にも気づかせたいです。大和言葉だと表現できないことが、漢文だと表現できる。言語感覚を磨くことにもつながります。

言語化することは、体育の授業と同じで、継続することで身についていくのだと思います。言語化の重要性は、共通テストのおかげでよりはっきりしたとも言えます。共通テストでは物事を言語化できてないと解けない問題が増えていると感じます。

佐藤先生(英語)
私たちは英語については4技能を習得させようとしてこれまでやってきました。テストが変わったから教えることも変わるわけではなく、意識を変えるだけだと思っています。生徒の好奇心をくすぐり、「きちんと読むと英文はおもしろい!」ということを、生徒に理解してもらえることが大事ですね。

また、本校では生徒一人に対してタブレット一台があるので、タブレットを通して音読のベストテイクを提出させる方法を取っています。教師はいつでも音読の確認とフィードバックができますし、生徒はいつでもアップできるという利点があります。

04. 夏休みの過ごし方と2学期に向けて

興味関心の高い素材を選び、言語情報の楽しさを実感してもらいたい

進行役
夏休みの間の課題についてはどのようにお考えになられていますか?
渡邊先生(数学)
ちょうど考えていたところなのですが、普段授業でやらないことをじっくり調べ、実社会への繋ぎ方をレポートに仕上げて出してもらいたいです。時間をかけないと導き出せないものに取り組ませてみたいと思い、検討しています。
平野先生(国語)
ICTに関することで、授業では教師が吹きこんだ音声を生徒が聞いていますが、佐藤先生の事例をお聞きして、夏休みは逆でもいいなと思いました。ICTを活用して、生徒に書き下し文の音読を提出させるなど、普段チェックしにくい部分をクリアにできる方法を探していきたいです。
佐藤先生(英語)
本校の夏休みは2週間ほどと短く、あまり色々とできないのですが、長文読解と文法の復習をしたいと思っています。その時、興味関心の高い素材を選び、英語で情報を得る楽しさを知ってもらって、意見を書いてもらおうと思っています。

「自分で課題を設定・把握し、課題解決に向けて行動すること」ができるように

進行役
先生方が思う夏休み明けの生徒の理想の状態とは、どのようなものでしょうか?
渡邊先生(数学)
夏休みだけではないのですが、一年かけて「自分で課題を設定・把握し、課題解決に向けて行動すること」ができるようになってほしいと思っています。そのために夏以降は、PDCAのC(Check)やA(Action)ができる生徒になっていければというイメージを持っています。
平野先生(国語)
現代文では夏休みに本を2~3冊読み、世界を広げてほしいですね。漢文に関しては、漢文を声に出して読むことを夏も引き続きやってほしいと考えています。そうすることで、週1時間しかない漢文の授業を楽しみに受ける状態になっているといいですね。
佐藤先生(英語)
全体的には1~2年かけて、自学自習力をつけてほしいと思っています。そのために、常に自分で学習を進めることのできる方法を提示していきたいと思っています。英語では、単語を覚えることに慣れるといいなと思っています。音読に関しては、俳優が台詞の練習しているように、意味や場面を想像して音読するような音読方法を身に着けてほしいですね。
進行役
とても参考になりました。先生方、本日はありがとうございました。こちらのメンバーでの座談会は、今後も定期的に実施する予定です。今後ともよろしくお願いいたします。

学校紹介

岡山県立岡山操山高等学校
1学年約270名、2020年度のおもな進路状況:国公立大148名、(うち難関国立大34名)

神奈川県立鎌倉高等学校
1学年約320名、2020年度のおもな進路状況:国公立大 36名(うち難関国立大 2名)

大分県立大分舞鶴高等学校
1学年約320名、2020年度のおもな進路状況:国公立大 225名(うち難関国立大 21名)

編集後記

営業企画
守安

めまぐるしく変わる教育環境の中で、ともすれば「変化」にばかり目がいきがちでしたが、「これまで大事にしてきたことを、より洗練させていくこと」の大切さを感じました。
この連載企画では、先生方と意見を交わしながら、これからの指導を考えてまいります。三人の先生方、引き続きよろしくお願いいたします!

2021年7月 取材
2021年8月6日 公開

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