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2021年9月23日開催 研究会レポート(英語)
『Listening&Speaking Training Seminar』 -
2021年9月23日(木)、木村 達哉先生をお招きし、オンラインにて「Listening&Speaking Training Seminar」を開催いたしました。ご講演の内容をレポートいたします。
研究会の詳細
講師紹介
研究会
研究会 | Listening&Speaking Training Seminar |
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講師 |
作家 元 灘中学・高等学校 英語科教諭 木村 達哉先生 |
日時 | 2021年9月23日(木・祝)14:00~16:00 |
対象 | 高等学校・中高一貫校(中等教育学校)の先生 |
開催形式 | ZoomでのLIVE配信 |
研究会レポート
講演の主な内容
- リスニングの基本は「リスニングに使える語彙力」
- リスニングのトレーニング方法
- リスニングの家庭学習の方法や注意点
- スピーキング指導について
- スピーキングの家庭学習の方法や注意点
- 質疑応答
- リスニング・スピーキング力向上のポイント
リスニングの基本は「リスニングに使える語彙力」
まず、リスニングの一番基本的な部分は「語彙力」だと力強くお話しいただきました。時間をかけて単語の意味が出てくる程度の語彙力であれば、「リスニングでは使えない語彙力」だと考え、単語を聞いて即座にその意味が言えるというようなトレーニングが必要だと木村先生はお感じになられているそうです。
また、リスニングは問題集を解いたからすぐにできるようになるわけではなく、「自分で声を出す」「実際の会話を聞く」ことを多くしていくことで、できるようになっていくとお話しいただきました。
リスニングのトレーニング方法
リスニングのトレーニング方法としては、順に「ディクテーション」「リーディング」「オーバーラッピング」「シャドーイング」があるそうです。
まず、ディクテーションですが、これによって、分かっていること・書けないところなどが「見える化」していきます。生徒にも、ディクテーションのメリットを伝えるといいそうです。ディクテーションの注意点としては、生徒のレベルに合わせて音声を短く一時停止して区切ることです。どうしても書けないところは「どうして書けなかったか?」を分析することが大切だとお話しいただきました。
次にスクリプトの読み込み(リーディング)です。意味の分からないものを音読するのではなく、まずはリーディングでその文の意味を理解していくといいそうです。
リスニングでは、単語を知っているのに聞き取れないというケースに遭遇します。この問題はしっかり潰していくべきです。そのためにはネイティブの発音真似をする方法(オーバーラッピング)が簡単だそうです。オーバーラッピングの際、音声は、160wpmくらいの速さで流し、ネイティブのリズムを刷り込みます。発音の音量は音源が聞こえるように小さめにし、何度も反復して練習することが大切だとお話しいただきました。
また、シャドーイングは、頭で文の意味を考え、理解しながら、声に出すようにするといいとお感じになられているそうです。
リスニングの家庭学習の方法や注意点
最初のユニット学習では、ディクテーションの注意点やシャドーイングの目的など、生徒にディレクションを与え、実際に正しい方法で学習してみます。次のユニットからは家庭学習でも良いそうです。学校でリスニングの宿題チェックをしたい場合は、Back translationを活用してもいいとお話しいただきました。
教材を選定する際、リーディング文のレベルが非常に重要だそうです。家庭学習の場合は、生徒が自力で読めないものを選定しないことが重要です。少し難しい文章は授業であればリーディング可能ですが、家庭学習には向きません。生徒が自分で読めるレベルの教材・文章を選定することがポイントだと木村先生はお話になられました。
また、「リーディング」やその解説は業者が用意した教材があります。これを使えば、この部分は家でできますが、オーバーラッピングやシャド-イングは家ではやらないほうがいいそうです。日本語を見ながらBack translationを20回、できないのであればプラス5回、また5回、と何度も続けることは授業の中でないとできないことだとお感じになられているそうです。
他にもリスニングに関して、意味も音も取って完璧にシャドーイングできるスクリプトが30くらいになるとリスニング力が上がると実感されているそうです。だからこそ、何冊も新しい問題集に取り組むというよりは、同じものを何度も聞いて、「30パッセージは完璧にする」という意識が大切だとお話しいただきました。
スピーキング指導について
英語を本当に話したいなら、「英語を話すことに尽きる」と、お伝えいただきました。私たちの生活はルーティンですから、ルーティンの表現を知ることが大切です。またリスニングできない人は質問に答えられませんので、英会話にはリスニングが必須です。
つまり、スピーキングは、「ルーティンの表現を知っているか」「リスニングができるか」という二点が大事だと木村先生はお感じになられているそうです。
いきなりスピーキングすることは難しく、「トレーニング方法」や「話し方」、「意見陳述の型(Point、Reason、Example、Point)」などを先に生徒に教えるといいそうです。そのためには、自由英作文の指導=ライティングの指導も大事になります。型に従って話したい文を英語に直して書き、それを何回も口にしていくことでスピーキングのトレーニングになるそうです。
日常のルーティンの中で出てくる単語や表現を頭の中に増やし、「話すことのできるコンテンツを増やすこと」が大切だとお話しいただきました。
スピーキングの家庭学習の方法や注意点
木村先生は、灘高等学校教員時代、週4時間しかない英語の授業時間でそれぞれ一技能ずつ学習していたのでは時間が足りず、常に技能を横断させて指導されていたそうです。すべての技能は繋がっているので、一技能ずつではなくスピーキングのトレーニングも自由英作文でするなど、技能横断型の指導の中で、家庭と授業での指導の住み分けも大事だとお感じになられたそうです。
スピーキングでは、家でスクリプトを作り、学校ではそのスクリプトを使ってグループワークで英語を話す練習をするのも一つの手だとご提案いただきました。宿題として提出させる場合は、話す文をノートや紙に書いたものを提出させてもいいそうです。
質疑応答
- Q.リスニングの力を鍛えるために一番大切にしていることは何ですか?
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A.
語彙力増強だと思います。例えば、バイデンさん、トランプさんの二人だけにしてもそれぞれ使用する単語が違います。知らない単語はどんどん調べて覚えていく姿勢が大事ではないでしょうか。
また私はシャドーイングを日々の日課にしています。今まで何回も読んでいる文を使って何度もシャドーイングしています。
- Q.家でできるスピーキング力を向上させる方法について教えてください。
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A.
一つの方法としてですが、一日中英語で話すといいと思います。英語で言えない文章の場合は調べて、それを話す練習をする。今はネットで翻訳に便利なサイトも多いので使用するといいと思います。
リスニング・スピーキング力向上のポイント
もともと英語指導は、「4技能」ではなく、「社会に出た時に(大学に入った時に)、論文執筆や学会発表があっても困らないようにしてあげることが大切」と木村先生はお感じになられているそうです。
リスニングやスピーキングは、様々な教材に手を出さずに、決めた教材(スクリプト)で、今日話をしたようなトレーニングを「どれくらいやるか」ということが大切です。
「『勉強する気にならない』という日も、昨日やったものなどでいいので、5分だけでもシャドーイングをしてみましょう。7日のうちの2~3日しか声を出してない人が、リスニング力を上げるのは不可能だと思います。7日のうち5~6日と声を出す日を多く作るだけでもリスニング力・スピーキング力は向上するのではないでしょうか」と熱い言葉で締めくくられ、ご講演は大盛況で閉会いたしました。
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研究会を終えて
本研究会にご参加いただいた先生方からご感想をいただきました。
- 北海道・東北地区
H高等学校
I先生
Listening&Speaking Training Seminarを採用させていただいたのですが、Task7のSpeakingの使い方で悩んでいました。しかし、木村先生のお話を伺って指導方針が固まったので、今回のセミナーは大変有意義でした。
- 関西地区
K高等学校
T先生
ユーモアあふれるお話で2時間あっという間でした。また、リスニング、スピーキングはこうして指導する、ということをわかりやすく示していただいてありがとうございました。明日から授業で使わせていただきます!
2021年9月 取材
2021年10月14日 公開
N高等学校
K先生
木村先生のご著書や連載は拝読しておりましたが、初めてLIVEでお話をする木村先生を拝見しました。2時間の講演の中で、木村先生の経験に裏付けされた指導や提案は、実際に自分の授業でも実践したいと思うものでした。